突如あらわれたダッシュする謎の町人

江戸時代の町人が木造の家屋から飛び出している場面

シンディの父親であるメガデスと、冥王ハデスの

その関係を僕らが知るのはずっと後のことだ。

この頃の僕らは何も知らずに、ただシンディの

絶体絶命のピンチを救うことで精一杯だった。

ミッション失敗により寿命が100年減っていく。

5回失敗すれば、彼女は間違いなく死ぬだろう。

しかしクリアすれば、彼女の召喚レベルは上がる。

 

プシューと、気圧の変化による空気の音と共に

宇宙船のドアが横にゆっくりとスライドして開く。

『 へぇ、思ったよりも景色が違うものね 』

シンディはタラップを降りて江戸の土を踏んだ。

ジャージ姿から着替えて、紫色の長袖ブラウスに

黒のデニムジーンズ、青いスニーカを履いている。

続いてディラン、僕の順番で宇宙船から降りた。

 

『 時代が200年位ちがいますからね。

地球人の文明はまだまだ未発達な状態ですよ 』

シンディのスマホ画面にアゲちゃんが映っている。

ハデスの専用アプリをインストールしたようだ。

『 まずはその北斎って人を探さないとですね… 』

ディランは真剣な顔つきであたりを見回している。

すると突然、しゃがれた大声が草原に響き渡った。

 

『 だから猫をさっさと連れてこい!バカヤロウ!』

その声に押し出されるかのように、1人の男性が

50mほど先にある、木造の家屋から飛び出した。

『 ひ、ひぃぃ、先生、わ、わっかりました!』

ちょんまげ姿で、紺色の着物を着た中年の男が

必死な顔で腕を大きく振り、こっちに走ってくる。

『 え、何?なんなの?』 シンディは後ずさりした。