『 ・・・ここは、どこなの?』
シンディは立ったまま操縦席の机に両手をつき
前傾姿勢でモニターに映る景色を熱心に見ている。
画面には晴れた空の下、のどかな草原が表示され
鳥が飛び回り、草木は風に吹かれてそよいでいた。
『 江戸ですよ。この宇宙船は見つかると大騒ぎに
なるので、カムフラージュ機能をオンにしますね 』
アゲちゃんはそう説明すると、モニターに様々な
大気や気象の分析データを表示させていった。
『 酸素濃度クリア、窒素クリア、太陽光もOK
地球の平均値ですね。外に出ても大丈夫ですよ 』
なるほど、確かにその分析は必要だろうな。
時空を超えれば、大気の成分が違う可能性もある。
そこは僕らが知らない星に着陸する時と同じか。
『 初回ミッションなので、場所はサービスです。
近くに対象者がいますよ。制限タイムは72時間 』
・・・ん? 何か最後にすごいこと言った?
『 制限時間あんの!? 』 シンディと僕は叫んだ。
その様子を見てアゲちゃんはケタケタ笑っている。
『 そういうことはもっと早く言いなさいよ!』
シンディは鬼の形相でアゲちゃんに詰め寄った。
『 いや、あまり絶望的な情報を重ねて伝えると
お客様が自ら命を絶ってしまう場合があるので 』
アゲちゃんは不適な笑みを浮かべたまま続けた。
『 我々のマニュアルでそのようになっています 』
シンディは怒りと困惑が混ざった表情をしている。
『 つまり、これは・・・我々の善意です 』
そして画面に数字が表示された。『 残り72時間 』