
その男は僕たちの目の前あたりまで走ってくると
両手を膝につき、中腰でゼーゼーと息切れした。
『 ハァ〜、そんな都合よく猫がいるかよぅ… 』
息を整えた男が顔を上げると、僕と目が合った。
『 あ、こんにちは… 』 僕はとりあえず挨拶をした。
すると、彼の目に驚きの色が段々と浮かんでいく。
僕はハッ、と思い宇宙船がある方向に振り向いた。
…大丈夫だ。カムフラージュ機能により宇宙船は
周りの景色と完全に同化して、全く見えていない。
それなら彼は一体、何に驚いているのだろうか?
僕がそう思っていると、彼はシンディに近づいた。
『 いやぁ、アンタら奇妙な格好してるねぇ… 』
彼は自分のアゴを触り、シンディを上から下まで
舐めるように観察していく。 『 異人さんかい?』
シンディは嫌悪感を隠さない表情で僕の方を見た。
『 イジン、って何?』 顔はかなり引きつっている。
『 外国人か?って意味だろうね 』 僕はそう答えた。
僕らの場合は異星人だけど、異人には違いない。
『 日本語しゃべれんのかい⁉︎ 』 この会話は彼にも
聞こえたらしく、顔を更にシンディに近づけた。
その距離はかなり近く、もはやキスをする寸前だ。
ここでシンディは我慢の限界に達したようだ。
『 臭い 』 ・・・その瞬間、周りの時が止まった。
男は何を言われたのか理解できない顔をしている。
彼女は男の鼻先を指さして、更にたたみかけた。
『 アンタくっさいのよ!何食べたらそうなるの?
息もくさい、服もくさい、体も全部…臭い!!』
男の顔はみるみるうちに、怒りで赤くなっていく。