
絵を受け取ったシンディは、両手でそれを持って
しばらく立ち尽くしていた。明らかに様子が変だ。
ここから彼女の背中しか見えないが肩が震えている。
な、なんだ? 一体どんな絵を北斎は描いたんだ?
僕は彼女の肩越しに、そ〜っと絵をのぞき込んだ。
『 どうだ、猫娘?』 北斎はイタズラっぽく笑う。
そこに描かれていたのは妖怪のような猫娘だった。
いや、でも上手いな。明らかに人間ではないけど
シンディの特徴をよく捉えていて、彼女っぽい。
しかしこれは…、僕は視線を絵から彼女に向けた。
顔はひきつり、右の口角が上がって絶句している。
あ、これは怒ってるな。しかも、かなり相当。
北斎は文机に頬杖をつき、彼女の反応を見ている。
さっきの無礼な態度への仕返しか…性格悪いな。
『 と、とりあえず今日のところはこれで 』
僕は彼女がまたブチ切れて暴走する前に手を打つ。
ここは一時退却だろう。作戦は失敗に終わった。
あるいは、北斎に彼女の絵は描いてもらったから
ミッションクリアだろうか?後で確認してみるか。
僕らはそのまま北斎の家を出て宇宙船へと戻った。
ピンク色のリビングで円卓を囲んで作戦会議だ。
『 あんのクソジジィ〜!!』
シンディの怒りがここで爆発。よくぞ我慢した。
円卓の中央には北斎に描かれた絵が置かれている。
シンディ、ディラン、僕、と円卓を囲んで座り
正面の巨大モニターにはアゲちゃんが映っていた。
『 でも一応、これでミッションクリアでは?』
僕はわずかな望みに期待してアゲちゃんに聞いた。