
その後、シンディはディランになついた猫を操り
僕は歌いながら猫と一緒にラインダンスを踊った。
するとディランの元に猫が1匹、また1匹と集まり
結果的に5匹の猫と30分近く踊るハメになった。
それを見て北斎と北渓(ほっけい)さんは大いに喜び
北斎は饅頭をほおばり、北渓さんは酒を飲みだす。
何でこんな状況になったのだろうか・・・。
『 いやぁ〜、おめぇらすげぇな。さすが旅芸人だ 』
北斎は上機嫌で更に饅頭を1つ口にほおばった。
『 猫が踊ってるとこなんて、初めて見ましたよ!』
北渓さんは日本酒を茶碗に注いでグビグビと飲む。
どうやら北斎は下戸のようだ。そして超、甘党。
『 それにしても先生、何で急に猫を描こうと?』
すでに出来上がった北渓さんが北斎に質問をした。
『 それはこいつさ 』 その声は僕らの背後からした。
しかも女性の声だ。振り向くと、入口に小豆色の
着物を着た女性が1枚の和紙を持って立っている。
『 何だ、お栄 (えい) いたのか。サボりやがって 』
北斎が悪態をつく。どうやら弟子の1人のようだ。
『 な〜に言ってんだい。私もおとっつぁんの為に
猫を集めてきてやったのにさ 』 …え!?娘なの?
『 お栄ちゃんが持ってるその絵、誰の絵だい? 』
酔って目が虚ろになった北渓さんが絵に近づいた。
お栄という女性は絵をひらひらと動かして言った。
『 国芳さ 』 北渓さんは絵を受け取り、凝視する。
『 えええ!この猫の絵、歌川国芳が描いたの!?』
『 そ、おとっつぁんはこの絵にやられたのさ 』
お栄さんは意地悪そうな顔で北斎に視線を送った。