
その言葉をつい思わず独り言のように呟いた時
円卓を囲む皆の視線が集まってることに気付いた。
顔を上げてモニターを見ると、DJスケルトンも
ティーカップを持って僕の次の言葉を待っている。
『 あ、いや…この時代には絶対的な権力者がいて
それが将軍。そいつの命令には誰も逆らえない 』
ここまで話すと、シンディは理解したようだった。
『 そいつに命令させて北斎に絵を描かせるわけ?』
その後に続く疑問は声に出さなくても分かる。
『 どうやって?』
まあ、普通に考えたら不可能だろう。アテも無い。
ツテも無い。恐らく、会うことすら無理なはずだ。
その位、この時代の将軍という権力者は絶対的で
多くの家来を抱えて、江戸城の中で守られている。
しかし…この方法を使えば、それとは関係なしに
この時代の絶対的権力を利用できるかもしれない。
『 アゲちゃん、今の将軍が誰なのか検索して 』
DJスケルトンはティーカップをひっくり返した。
すると中の紅茶が画面上でウィンドウに変化して
そこに歴代将軍のリストが次々と表示されていく。
『 この時代ですと、11代将軍の徳川家斉ですね 』
よし、これならいける。僕はディランの方を向き
モニターに映る将軍の名前に手をかざして言った。
『 ディラン、この徳川家斉の姿になるんだ 』
彼女はキョトンとした表情でこちらを見ている。
『 え? 私が北斎さんに命令するんですか?』
彼女は今は人間の姿だが、本来はムーピーという
不定形生物で、どんな生物の姿にでも変化できる。