その一方、僕らがそんなよく分からない出来事に
巻き込まれている時、遥か7億光年の彼方から
それを上機嫌にほくそ笑んで眺めている男がいた。
『 これであのじゃじゃ馬も大人しくなるじゃろ 』
彼は片手に持ったワイングラスを揺らして舐める。
中に入った真紅の液体は新鮮な異星人の生き血だ。
閻魔大王のようなその男は大きな玉座にもたれた。
『 しかし閣下、良かったのですか?
実の娘の寿命を我々との取引に使ってしまって 』
骨や頭蓋骨で出来た巨大なテーブルの上にある
通信機から投影されたホログラフの男が言った。
白い長髪に不健康そうな白い顔、しかしその目は
不気味なほど妖しい光を放ち、赤く輝いている。
彼こそハデスのCEO、ハデス・クラークソンだ。
『 よい、よい。勝手に星を飛び出して
自分の立場を放棄した娘には丁度いい罰じゃ 』
シンディの実父である、メガデス・ルーパーは
黄金の玉座に座り、遠い目をして天を見上げた。
『 しかし、亡くなる可能性もありますが・・・ 』
言葉とは裏腹に、ハデスの顔は薄く笑っている。
メガデスはハデスをキッと睨みつけて言った。
『 悪魔には悪魔の子の愛し方がある。
一般の異星人のモノサシで我々を測るでない 』
そして、グラスの生き血を一気に飲み干した。
『 もしそうなれば、蝋人形にでもしてやるわ 』
メガデスは口の脇から垂れる血を右手で拭った。
ハデスはそれをしばらく眺め、クックッと笑う。
『 素晴らしい親子愛です。彼女も幸せでしょう 』