今日はシンディの宇宙船をメンテナンスする日だ。
彼女は僕の友達で、クライアントでもある。
もともと僕はギターのアドリブ演奏で色々な星を
流しで渡っていたが、チップをはずんでくれる
裕福な銀河もあれば、そうでないエリアもある。
音楽に全く興味の無い生物、耳が無いのもいる。
そんな中で堅気の仕事を持つことは、とても大事。
『 ちわー、スペースシップメンテでーす 』
僕は彼女の宇宙船の入口でコールボタンを押した。
川沿いの大きな橋の下に、まん丸でピンク色の
大きな物体が、怪しさと違和感を醸し出している。
しばらくすると、入口がスーッと上がって開いた。
リビングに行くと、シンディはソファで横になり
ポテチを食べながらアニメ雑誌を黙々と読んでいた。
ディランは・・・何か調べものでもしてるのかな?
パソコン画面に集中して、こちらに気付いていない。
『 どこか気になるところある? 』 仕事前の確認だ。
『 んー、エンジン周りと、誘導ミサイルの調整 』
彼女は僕の方を見ずに言った。よし、今日こそは…
『 ところでさ、支払い…日本円にならないかな?』
『 無理 』 即答だった。彼女は雑誌をソファに置く。
『 相場のギルで払ってるから問題ないでしょ?』
『 まあ、そうなんだけどさ… 』 現在の宇宙通貨の
主流はギルかゴールドだ。それを日本で使うには
ギルをドルに両替してから日本円にする必要がある。
『 両替手数料、いくらすると思ってんの!』
彼女はプチ切れした。いや、だからそれ払ってんの
こっちなんだが・・・、今回も交渉は失敗だった。