
とはいえ、この時代であまり複数人で出歩いても
目立ってしまい、トラブルに遭う可能性がある。
どちらにしても僕とディランの2人で行こうとは
思っていたし、宇宙船に1人留守番も必要だった。
何しろアレが無くなったら現代に帰れないのだ。
シンディの様子は気になったが、彼女も留守番を
することに同意してくれたから、大丈夫だろう。
『 時間が無い、とにかく急ごう 』
隅田川と千住大橋の位置関係をここから見ていくと
どうやら今いる街道を南の方に進めばよさそうだ。
辺りは草木が生い茂り、これといった目印も無い。
のどかな田園風景の中に民家がチラホラある程度だ。
昔の人達はよくこの環境の中で生活をしていたな。
スーパーもコンビニも無い、ましてや車も無い世界。
僕が地図を見ながら江戸時代の感慨に浸っていると
ディランが遠巻きに何かを眺めているようだった。
『 あっちの方から沢山の人達が歩いてきますよ 』
彼女の視線の先は、千住大橋を少し渡ったところで
ここからちょうど下り坂になっていてよく見える。
確かに、もの凄い人数だ。200人以上いそうだな。
先頭に長槍を持った侍、のぼり、馬、そして駕籠。
『 ああ、あれは大名行列か!』
この時代に来て本物を見れるなんてラッキーだな。
『 だいみょう?』 ディランが不思議そうに質問する。
『 大名ってのは…殿様だな。殿様ってのは… 』
ここで言葉に詰まった。意外と説明が難しいな…。
『 じゃあ、家斉さんいますね!聞いてきます!』
そう言って彼女は大名行列に向かい駆けていった。