
翌朝、僕はディランを連れて城下町へと向かった。
徳川家斉の姿を実際に見ないと、彼女はその対象に
変化することができない。写真か映像が必要だ。
将軍を撮る!そしてさっさと現代社会に帰りたい。
江戸時代に来てから、すでに24時間経過していた。
残り48時間以内に、将軍を撮る→ディラン変身
→北斎に命令、までを完了させなければならない。
『 あのお城に向かっていけばいいんですよね!』
ディランは興奮気味に言った。とても楽しそうだ。
この時代の空気は澄んでいて、自然も豊かだから
彼女にとって居心地の良い環境なのかもしれない。
『 けっこう距離あるよ。地図だとここらへん 』
僕は北渓( ほっけい )さんに頼んで書いてもらった
江戸城までの地図を広げて、現在地を指差した。
『 う〜ん… 』 地図を見ながら彼女は首をひねった。
殴り書きで確かに分かり辛い。とりあえず川と橋
その周りにある寺?みたいな建物があるだけだ。
ただ、その情報だけでも城を起点にすると分かる。
『 江戸城がここだろ、だから僕らが今いる場所は…
あそこにあるのが隅田川で…あれが千住大橋か!』
要するに現代の千住から皇居に行けばいいわけだ。
『 すごい!この地図で分かるんですね!』
ディランが手放しで褒めた。悪い気はしないな。
『 まあ、現代の東京だからね。よし、行くぞ!』
僕が勢いよく行進すると、彼女はふと立ち止まり
心配そうに言った。『 センパイ大丈夫ですかね… 』
昨日の夜からシンディは宇宙船の部屋にこもって
考えごとをしている。確かに不安要素ではあった。