アドリブでその場しのぎをしてみたものの失敗か

白髪で長髪の老人が指でお金マークを作ってアピールしている場面

『 え、え〜と…、僕らはこんな感じで・・・』

とりあえず僕はこの気まずい沈黙と疑惑の空気を

払拭するために、喋りながら考えることにした。

北斎と北渓さんは胡散臭そうに僕らを見ている。

『 人々があっ!と驚くようなことを… 』 その瞬間

僕の脳ミソに光明が差しこみ、アイデアが閃いた。

『 旅!そう、僕らは全国を回る旅芸人なんです!』

 

これならどうだ!かなり無理矢理な設定だけど

話のスジは通る!僕はそのままアドリブを続けた。

『 で、その宣伝に彼女の絵を!天下の北斎先生に

描いていただこうと思っておりまして・・・』

北斎は一応、僕の話を黙って聞いてくれている。

シンディの方は…何やら白けた顔で僕を見ている。

くぅ〜、お前のためにひと芝居を打ってるんだぞ。

 

とりあえず、僕の説明がひと段落したところで

北斎は小指で耳をほじり、耳アカをフッと吹いた。

『 ああ、要するに宣伝用の引札が欲しいのか?』

引札 ( ひきふだ )? 僕はこの耳慣れない単語で

少し反応が遅れたが、文脈的にはチラシだろう。

『 そ、そうです!その引札をお願いしたいなと 』

北斎はあぐらの姿勢で値踏みするように僕を見た。

 

『 で? いくらよ?』 そこで僕は言葉に詰まった。

しまった…お金のことを全く考慮していなかった。

『 おいおい、天下の北斎様に絵を描いてもらおう

ってのに、スカンピンじゃ話になんねぇだろ 』

北斎は僕らを嘲笑い、追い払うように手を振った。

『 帰ぇんな 』 ここまでか…と僕が諦めかけたその時

背後から『 にゃあ〜 』と猫の鳴き声が聞こえた。