
シンディや北斎は「はぁ?」といった反応だった。
ディランや北渓さんは期待の眼差しで見ている。
・・・まぁいいや、ここまできたら歌うか。
僕は開き直った。歌えばいいんだろ、歌えば。
『 では不肖私、アドリブマンが・・・吟じます!』
カステラ…は1番にしたらダメだな。この場合は
今の時代と状況に合わせた歌詞にする必要がある。
『 あ、ワン、ツー、ワンツースリー…手拍子を!』
僕は体を揺らしてリズムをとり、皆をあおった。
こんな時、普段のライブのステージングが役立つ。
『 浮世絵1番、カステラ2番♪ 北斎先生、天下一 』
もうこのワンフレーズのみだ。そのまま突っ走る。
『 浮世絵1番、カステラ2番♪ 北斎先生・・・
天下いちぃ〜🎵 』 最後は拳を効かせて歌いあげた。
目を閉じて天を仰ぐ。額からイヤ〜な汗がたれた。
お笑い芸人が新ネタを披露する時のような気分だ。
僕はゆっくり目を開けて、薄目で皆の反応を見た。
シンディは…薄く笑っている。まぁ、想像通り。
お前のために歌ったんだがな。さらしモノかよ。
そして、そのまま目線を北斎と北渓さんへ向ける。
すると2人は感心したような表情で僕を見ていた。
『 先生、今のは、かすてぇいらの美味さよりも
先生の絵の方が上手い、とかけたものでは・・・』
北渓さんが小声で言うと北斎は「うむ」と唸った。
『 何の唄か知らねぇが、天下一は言い過ぎだな。
せいぜい日本一だろう 』 おぉ、悪くない反応だ。
ちょっと盛って天下一のフレーズにして良かった。
しかし自分で日本一とは・・・すごい自信家だな。